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富山地方裁判所 昭和46年(む)158号 決定

被疑者 戸谷修

決  定

(被疑者氏名略)

右の者に対する強姦殺人、死体遺棄各被疑事件について、昭和四六年六月二三日富山地方裁判所裁判官佐野久美子がなした勾留の裁判のうち勾留場所を富山刑務所とする部分に対し、富山地方検察庁検察官藤坂亮から準抗告の申立があつたので当裁判所は次のとおり決定する。

主文

原裁判中勾留場所を富山刑務所とした部分を取消す。

被疑者に対する勾留場所を富山北警察署と指定する。

理由

一、本件準抗告申立の趣旨およびその理由は「準抗告申立書」記載のとおりであるのでこれを引用する。

二、ところで被疑者を勾留する場合の勾留場所は、捜査上の多少の不便はあつても原則として拘置監たる監獄とすべきであつて代用監獄たる警察署の留置場とするのは捜査の必要上特段の事由がある場合に限るものと解すべきであるが、一件記録によると、被疑者はすでに概括的な自供はしてはいるけれども、未だ捜査は完了しておらず、今後の捜査の進展にともなつて被疑者を犯行現場に同行して指示説明させたり、多数の証拠物を示したりあるいは関係人に面通しさせたりするなどの必要性が認められるところ、勾留場所を富山刑務所とした場合、同刑務所における人的、物的諸設備並びに取調べ時間についての時間的制約あるいは捜査機関の機動力等を併せ考えると、右捜査の上で多大の不便を生ずることが窺われ、これがためにかえつて迅速な捜査の進行が妨げられるおそれがないとはいえないし、本件の場合に被疑者を特に代用監獄の留置場に拘置したとしても、そのために特に不利益な取扱いがなされるものとは認めがたい。

三、以上の点を考えると、本件の場合、勾留場所を富山警察署と指定する特段の事由は認めがたいが、被疑者が現に取調べを受けている富山北警察署の留置場と指定するのが妥当であると思料されるから、結局原裁判中勾留場所を富山刑務所とした点は相当性を欠いているものというべきである。

四、よつて、刑事訴訟法四三二条、四二六条二項、四二九条を適用して主文のとおり決定する。

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